さてファースト・マイ・アイドルはと言えば、業界内でもファンが多い「南沙織」であります。
1971年。小学校六年生でした。当時唯一知っていたCBS・ソニーというレコード会社だったのも覚えています。
沖縄返還前で(もちろんそんなこと当時の自分が深く知る由もありません)アメリカ・オキナワという出身地にも興味をひかれ、小麦色の肌に長い黒髪、ぱっちりとした瞳が、それまでテレビで観てきた歌手とは明らかに違うポジティブな雰囲気に溢れていました。
なんか変な言い方ですが「目の前にはいない人への初恋」のようなものだったでしょうか。ぼんやりぼんやり。
それまでに歌謡曲として初めて買ったシングル黒板(くろいた)はピンキーとキラーズ「恋の季節」、アニメでは「巨人の星」で、それぞれに買った時の喜びはありましたが、『17歳』は手に入れた瞬間何か秘密を持ったような気持ちになり親や同級生には黙っていました。
大好きな彼女を悟られないような独り占めしたいような、恥ずかしいような。まったく物理的な距離は離れまくっている人なのに・・・。あー純粋!
それまで日本の歌謡曲は大人が作って大人が唄って大人が聴くような印象があって、自分には感情移入しづらいものでしたが、『17歳』はまだ自分の上の年齢ではあるけれど手が届きそうに身近に感じられたのです。
歌い方も「誰もいない海 ふたりの愛を確かめたくっぅてぇ〜」の「たくっぅてぇ〜」がたまらなくってぇ〜でしたのよ。「好きなんだものっ! 」もすっごくいいんだっ!
その後リリースされる曲も彼女らしさが前面に出ていて素晴らしいものでした。
今までのザ・歌謡曲のインドアなイメージから、陽が降り注ぐ明るい太陽の下で目の前がパアッと開けるようなイメージで今でも普通の感覚で聴くことができます。
有馬美恵子さんの歌詞が清潔感のあるプラトニックなテーマで、南沙織のイメージをより鮮明に作り上げ、スッと体の中に入り込んでくる筒美京平さんの曲に、彼女のルックスと素朴な歌声というのも色あせない原因かもしれません。